あづまや きものひろば / How to きもの

普段着のきもの帖

式服でも、習い事でもない。自分が自分らしく、毎日のなかで楽しむための「きもの」。小紋・紬・お召・木綿・ウール・洗える着物、六つの見立て。

「普段着の着物ってどんな種類があるの?」——お客様からよくいただく質問です。

あづまや きものひろばが一番大切にしているのが、この普段着です。「式服」「習い事」といった決まりごとがまったくないのが普段着で、自分らしく、日々の暮らしのなかでファッションとして「きもの」を楽しめる。だから面白い、と思っています。

ここでは実際の使い方を交えて、どの着物がどんな場面で着られるのか、それぞれの特徴とあわせて六種類を見ていきます。帯は基本的に名古屋帯半巾帯を、場面に合わせて選びます。

以下は、店で毎日きものを着て過ごしている当店の見立てです。地方や流派によって解釈が違うこともありますので、ひとつの提案として読んでいただければと思います。

普段着の場所別TPO

基本は自由。そのうえで、迷ったときの目安を二つの場面で整理しました。

普段着の楽しみ方 ― 場面別の目安
合わせるもの 観劇・コンサート・同窓会 ぶらり街歩き・お買い物
おすすめの着物 小紋・紬・お召 小紋・紬・木綿・ウール
九寸名古屋帯 八寸名古屋帯・半幅帯
上着 道行コート・羽織 ショール・羽織

小紋

komon 絹 / 普段着にも、少しおすましにも
小紋 飛び柄の反物
格のめやす
普段 ―― よそゆき
予算のめやす
7万円台〜(総柄)
相性のいい帯
名古屋帯
家で洗える
×正絹(ポリならOK)
「まず一枚」と聞かれたら、小紋。

普段着にはもちろん、少しおすましなお出かけまで着こなせる、人気の一枚です。「毎日は着ないけれど、年に数度は着物を着たい」という方には、小紋の着物がおすすめです。

小紋は「着物全体に柄が入った着物」というイメージ。飛び柄は無地感覚でフォーマルにも寄せられるので、袋帯を締めればお友達の結婚式の二次会、お茶会、お花会、観劇、コンサートなどに向きます。鮫小紋(江戸小紋)は遠目には無地に見え、小紋のなかでは少し格上。柄によっては普段着でも楽しめます。ポリエステルの洗える着物の多くもこの部類。個性豊かな柄が多く、絹の入門としてもぴったりです。

合わせるもの

長襦袢
自由。色や織柄が入っていてもかまいません。当店の洗える絹の長襦袢がおすすめ
名古屋帯が基本。カジュアルダウンで格の高めの半幅帯も。
小物
半衿は白でなくて色柄自由で。お草履は当店のあづまロッソがおすすめ

tsumugi 絹(先染め) / 普段着の王様
紬の着物
格のめやす
普段 ―― よそゆき
予算のめやす
10万円台〜仕立て付き
相性のいい帯
九寸・八寸名古屋帯、半幅帯
家で洗える
×(絹でも洗えるものもあります)
紬は普段着の王様

着物のなかでいちばん着やすいと親しまれているのが紬です。糸の段階で染めて柄を織る「先染め」で、裏表がわかりにくい(なかには裏表のない)着物。高価なイメージがありますが、機械織りなら数万円台の品もあります。

糸を紡いだ節が空気を含むので、冬は暖かい。ざっくりとして着崩れしにくく、とても着やすい着物です。産地によって表情が大きく変わり、寒い地方の紬は真綿を使って厚みがあり、暖かい地方(とくに大島紬)は薄手。もともと庶民の普段着として作られた実用着なので、丈夫で長持ちします。

代表格は日本三大紬——鹿児島「大島紬」、石川「牛首紬」、茨城「結城紬」。伝統的工芸品は高価ですが、素敵な柄が数多くあるのは新潟の「十日町紬」で、私はこれが好きです。ほかに信州紬、置賜紬、琉球紬など。織り手の高齢化で十年後には無くなると言われる産地もあり、一度途絶えると復興は難しい。国や県の支援が必要だと感じています。日本の伝統を身に纏う一枚として、ぜひ。

合わせるもの

長襦袢
色柄自由。当店の洗える絹の長襦袢がおすすめ
九寸・八寸名古屋帯、半幅帯。博多織は締めやすく緩みにくい
小物
金銀の入らないものを。お草履は当店のあづまロッソがおすすめ

お召

omeshi 絹(先染めの縮緬地) / 粋を求める人に
お召しの着物
格のめやす
普段 ―― よそゆき
予算のめやす
仕立て付き10万円台〜
相性のいい帯
名古屋帯
家で洗える
×と◯(防縮加工が必須)
縞のお召は、粋な着こなしを求める人に。

徳川十一代将軍・家斉が好んで「お召し」になったのが名の由来。横糸に強い撚りをかけて織った、先染めの縮緬地です。おしゃれな柄物が多く、小紋のように普段着として着られます。男性物には無地もあり、羽織と対で家紋を入れて礼装用・お茶会用に使われます。

ほかの縮緬地より張りがあり、シワになりにくいので、無地はお茶席で喜ばれます。最近は防縮加工した商品でお家で洗えるお召しが売れていておすすめです。格としては正絹小紋と同じ感覚で。おしゃれ着の代表的な着物で当店一番人気の商品です

合わせるもの

長襦袢
お茶の場合は白や無地系。普段着としては色柄自由。当店の洗える絹の長襦袢がおすすめ
基本は名古屋帯。
小物
半衿は自由(男物の礼装・お茶会は白が基本)お草履は当店のあづまロッソがおすすめ

木綿

momen 木綿 / もっとも普段着に近い一枚
木綿の着物
格のめやす
普段 ―― よそゆき
予算のめやす
仕立て付き ¥30,000台〜
相性のいい帯
半幅帯が中心(八寸名古屋帯も)
家で洗える
家で洗えて経済的、毎日のように着られます。

着物のなかでいちばん普段着に近いのが木綿です。一枚で三シーズン着られると言っても過言ではありません。私が普段着としていちばん好きなのも、この木綿です。

木綿は古くから日本人の普段着として、もっとも身近に親しまれてきた着物。最大の特徴は、汗をよく吸い、丈夫なこと。産地によって織り方も生地の厚みも異なります。代表的なのは遠州木綿、新潟の片貝木綿、三重の伊勢木綿、福岡の久留米絣など。当店地元の三河木綿も。店長の私も、木綿で過ごす事が多いです。

良さは何といっても風合いと着心地。シワになりやすく縮みやすいのが欠点と言われますが、当店では全品しっかり水通しをして、反物の時点で先に縮ませますので仕立てた後の縮みは最小限に抑えます。呉服屋の私が毎日着ていても「素敵な着物ですね」と言われるので、多くの方は木綿と気づいていないと思います。これから普段に着物を、という方はまず木綿を一枚どうぞ。あなたにぴったりのサイズで、オーダー仕立て付き¥30,000〜で作れます。

合わせるもの

長襦袢
色柄は自由。毎日着るなら洗えるうそつき長襦袢が便利(胴は晒、袖は洗える生地や洋服地で)
半巾帯がメイン。八寸名古屋帯を締めると紬のように見えて一段と素敵に
小物
重ね衿は基本不要。帯締・帯揚は色柄自由(礼装の金銀以外)。バッグは巾着や洋服用でも

洗える着物(ポリエステル製)

washable ポリエステル(化繊) / 柄物は小紋の扱い
木綿の着物
格のめやす
普段 ―― よそゆき
予算のめやす
仕立て上がり ¥50,000〜
相性のいい帯
名古屋帯・半幅帯(正絹小紋に準ずる)
家で洗える
洗えることより、オーダーであること。

30年ほど前から一気に普及したのが洗えるポリエステルの着物です。「種類でいうとどこに入るの?」とよく聞かれますが、一言でいえば絹の代替商品。柄物なら「小紋」、無地なら「色無地」と言って差し支えありません。化繊だからと普段着ばかりでもなく、いまは訪問着や振袖にも洗えるタイプがあります。ここでは「小紋」としての洗える着物を取り上げます。

いちばんの売りは「家で簡単に洗えてシワになりにくい」こと。お稽古事や飲食のお仕事にもよく使われます。ただし仕立て上がりはサイズ展開が限られ(いまはS・M・L程度、以前はフリーサイズ)、「着物は着づらい・歩きにくい」と言われる一因にもなりました。当店がおすすめするのはオーダーメイドです。水を使う仕事、お稽古、雨の日にとても重宝するので、当てはまる方は「まず一枚」持っておきたい着物です。

合わせるもの

長襦袢
色柄は自由。毎日着るなら洗えるうそつき長襦袢が便利(胴は晒、袖は洗える生地や洋服地で)
名古屋帯・半幅帯。TPOは正絹の小紋に準じて
小物
帯締・帯揚は色柄自由。草履・バッグは礼装用以外を

よくある質問

普段着の着物、まず一枚買うなら何がいい?
毎日のように着るなら木綿(オーダー仕立て付きで3万円台から)、おでかけ着なら小紋(10万円台から)がおすすめです。木綿は汗を吸い、丈夫で、家で洗えます。
木綿の着物は縮む?
当店では仕立て前にしっかり水通しをし、縮み分を見込んだ寸法で仕立てますので、ほとんど縮みません。また着用と洗濯を重ねるうちに落ち着きます。
紬は格が低いから改まった席には着られない?
観劇・コンサート・同窓会などカジュアルな席は問題ありません。式服や正式な礼装の場には向きません。
普段着の着物に合わせる帯は?
名古屋帯が基本で、最近では半幅帯もおしゃれなものが増えてきました。街歩きやお買い物には半巾帯、少し改まるなら八寸・九寸の名古屋帯が向きます。

あなたのサイズで、一枚から。

当店の基本はあなたぴったりのサイズでオーダー仕立て付きです。どの種類がいいか迷ったら、着る場面をお聞かせください。店主が見立てます。実店舗もありますので下見のご来店も歓迎です。